特集

がんばってます!卒業生。
森川晃夫さん

2015.11.05 卒業生

『新・・・今の概念を全て取っ払い、一から考えてみる』

 これをモットーとされている森川晃夫さん。会報Leap30号でもご紹介していますが、会報では紹介しきれなかった素敵なお話と、卒業生・在学生のみなさんへの熱いメッセージをご紹介しましょう!

 みなさんこんにちは。平成10年に流通科学部を卒業し、阪急淡路駅前で「昭和湯」を経営している森川晃夫です。「銭湯」と聞くと男性のみなさんからは「一度でいいから番台に座ってみたい!」と言われる憧れの仕事?ですが、夕方から深夜までお客様の対応、温度調節、脱衣場の整理整頓、清掃と続き、家族そろって夕食を摂ることもままならない大変な仕事です。

 私は、大阪学院大学高等学校を卒業し、流通科学部第1期生として本学に入学し、後藤登先生のゼミでマスメディア論などを学びました。在学中はテニス、スキーを楽しむ「BEANS」というサークルに所属し、企画、運営担当として様々な行事を計画したり、サークルの月刊誌を作成したりしていました。卒業後は一般の企業へ勤務していましたが結婚を機に退社し、曾祖父が昭和3年に長野から大阪にやってきて開業した「昭和湯」を祖父が引継ぎ私で4代目です。ちなみに大阪の銭湯経営者は北陸、特に石川県出身者が多く、銭湯のオーナーに出身地を聞くと、大半の方から石川県出身の次男、三男という答えが返ってきます。これは銭湯の仕事は、朝早く夜も遅い。そしてかなりの重労働ですが、農作業に比べればさほど苦になりません。また、故郷にいたのでは、自分の土地や財産を持つことは容易ではありません。このような理由から忍耐強い北陸人には銭湯という仕事がぴったりだったようです。

曾祖父は、身一つでできる仕事として銭湯を選んだようです。祖父の代に事業を拡大し、4軒の銭湯を経営するまでになりました。しかし時代の流れとともに内風呂が標準となり、生活スタイルが変わり昭和50年ごろ2,300件前後もあった大阪の銭湯は、今では670件程度となっています。森川家の4銭湯も、今営む「昭和湯」を除き、それぞれ介護施設やマンションへと変更しました。その関係もあり、今は不動産業と銭湯業の二足のわらじを履いているところです。

 そのような変化のなか、多くの方に銭湯をご利用いただくために、学生時代の経験を生かし様々な取り組みをはじめました。あるとき風呂屋のロゴ(親と子が向かい合って入浴している様子)を見て、これが本来の風呂屋のあるべき姿「風呂屋で親子が楽しい時間をすごしてもらおう」と考え、湯船にアヒルのおもちゃを一杯浮かべる「アヒル風呂」を思い立ちました。常連のお客様の迷惑に成らない様に、最初は営業時間前の昼に実施しました。店前に大きなアヒルを置き、ポイを使った「アヒルすくい」や、アヒルの形に形成したタオルを販売したりとアヒル一色のイベントを数回開催しました。それなりに好評でしたが、通常営業までに2000個のアヒルを引き上げ、消毒する手間を考えるとかなり大変なので、もう止めようと思い、最後の記念に通常営業時間内に「アヒル風呂」をやってみました。すると常連のお客様が初めてこのイベントをご覧になり、「これは楽しいからぜひ続けて」とクレームが出るどろこか大人気となり、産経新聞やMBSテレビで紹介されたこともあり、初めてのお客様も大勢おみえになりました。今では定期開催の大きなイベントとなっています。アヒルをきっかけに、アヒルグッズをお送りいただいたり、保険会社のアフラックさんからも紹介の連絡をいただいたりと人のつながりのありがたさを感じています。 

ところでみなさん、銭湯にも関西と関東の違いがあるのをご存知ですか? まず風呂屋につきものの富士山の絵ですが、関東は絵の具(ペンキ等)で描かれていますが、関西はタイルをモザイク模様で仕上げています。そして呼び名も関東では「銭湯」、「○○湯」と呼び、関西では「風呂屋」、「○○温泉(大半が実際の温泉ではありません)」と呼んでいます。また熱い風呂にサッと入るのが関東人の”粋”と言われていますが、これは公衆浴場の条例によるもので、東京都の設定が高い温度になっていたからです。(現在は規制がはずされています)そして、「ケロリン」と底に印字されているおなじみの風呂桶のサイズも、沢山お湯を使われるともったいないという理由(大阪人はケチ!?)からでしょうか関西のサイズは関東に比べ小さくなっています。このように様々な点で大きな違いがあるのです。

 また、銭湯での楽しみといえば入浴後の飲み物を挙げる方も多いと思いますが、少し前までは珈琲牛乳が人気でしたが、昨今は、フルーツ牛乳が人気です。もちろん瓶を片手で持って、もう一方の手は腰にあてながら飲まれています。なぜかみなさんここは共通の様です。

 曽祖父が開業した風呂屋を残すため、これからの銭湯のあり方を考えたときに、家庭と仕事場の2つの場所とそれ以外のくつろげる場所を「3rd place」と考え、銭湯をそのような場にしていきたいと考えております。単に風呂に入るだけの場所から、親子でくつろげる場所、そして今まで以上に近所の人のコミュニティの場となるよう願っています。そこでアヒル風呂に続く企画として考えているのが「朝営業」です。ご年配の方の生活リズムが朝型なので、午前中にご利用いただけるように検討しています。現在は土曜日のみ朝営業を実施していますが、これからはさらに拡大していきたいです。

 高校から大学まで僕は大阪学院で7年間過ごし、やりたいこと、わからないことに、いつも友人や先生が手を差し伸べてくれ、様々な事を学びました。サラリーマンを経験し、家業を継ぐなか、何か新しい事をやりたいと思ったとき、『「新」という漢字は、立っている木を斧で切り倒すというところに由来しており』とりあえず今の概念を全て取っ払い、一から考えてみることが大事だと思っています。卒業生のみなさん。在学生のみなさん何事にも新たな気持ちでチャレンジしてください。きっとすばらしい人生が待っていますよ。

森川商事株式会社 取締役 森川 晃夫
平成10年卒 流通科学部流通科学科  連絡先/06-6322-2645
▼ http://www.morikawashoji.co.jp/
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